半田法律事務所からみなさまへ
2025.6.18 
コラム
「だいじなもの」の残し方

 ご縁があり、この度NBCラジオ佐賀の「サブカルラジヲ」(毎週木曜21時30分~22時放送)の6月19日放送にゲスト出演させて頂くことになりました。パーソナリティの方々のフリートークに混ぜてもらったのですが、慣れないもので十分な話ができたかは自信がありません。お恥ずかしいですが、興味のある方はご視聴ください。放送ではほぼ仕事とは関係の無い話で終始してしまいましたので、ちょっと真面目な話をホームページ上で補足しておきます。

 放送で「自分は価値があると思っているが、家族には理解されないコレクション」の話がでましたが、これは法律的にもなかなか面白い問題です。例えば一部で高く評価されているものが事故で壊された場合(クラシックカーの事故が分かりやすいですね)の損害額はいくらになるかとか、勝手にコレクションを処分されたことが離婚理由になるかとかです。その中でも関心が高いであろう話題として「自分がコレクションを管理できなくなったときに備える方法はあるか」という問題があります。

 考えられる問題としては、①認知症などで必要な管理ができない状態になったときにどうするか、②自分が死んだ後にコレクションを信頼できる人に引き継げるか、というものです。

 ①については信頼できる方に予め管理を依頼しておくこともできますが、例えば自動車でレストアが必要になったとか、コレクションを第三者に貸し出す可能性があるとか、コレクションを処分する必要が生じた場合など、管理受託者の名前で契約ができない場合を想定して「民事信託」をしておくことも考えられます(民事信託については2024.2.26のコラム「民事信託をご存じですか」も参照ください)。民事信託では信託財産の所有権をいったん受託者に移すことになりますが、信託終了時(例えば委託者の死亡時)にそのまま受託者に引き継ぐか、受託者以外の者に帰属させるかを選択することができますので、②の問題もまとめて解決することが可能です。民事信託は不動産など収益性があって管理が必要な財産に用いることが多いのですが、例えば「ペットの世話」のために一定の財産を信託するなどの活用もできる制度であり、貴重なコレクションの管理や承継にも応用が利くものと思われます。

 また、②の自分が亡くなったあとのことについては「遺言」を考える方が多いと思いますが、遺言は相続財産の帰属先を定める制度であり、遺産分割完了までの管理や、遺産以外の事務処理には対応できません。そこで最近注目されているのが「死後事務委任」という制度です。これは生前に自身の死後に生じる一定の事務(例えば葬儀や自宅不動産の賃貸借の解約など)を予め第三者に委託する制度であり、遺言と併用することで自身の遺志をより的確に実現できる制度です。例えば引き取り手が出てくるまでコレクションの保管を依頼することは死後事務委任で可能ですし、誰かに譲るのであれば遺言を書いておくことで、価値を理解してくれない相続人に処分されてしまうことも防げます。

 民事信託も死後事務委任も、実際に契約をするとなると「誰に頼むか」という問題のほか費用や事務負担の問題もありますのでそんなに簡単ではありませんが、今後はこういったことでも信託や死後事務委任を活用できるようになればいいのにな、と考えております。

 放送では時間の関係もあって専門的な話をする機会がありませんでしたが、もし「○○が法的にどうなるのか」ということを聴いてみたいというご要望がありましたら番組宛にメッセージを頂ければということです。次に出演の機会をいただければ、解説させて頂きます。

 なお収録は6月17日夕方に完了しているのですが、リクエスト曲がその日の深夜に放送された某番組で使用された曲ともろに被ってしまいました。収録は放送前だったので、その番組の内容を全く知らずにリクエストしたということを念のためお断りしておきます。

(半田)