半田・江藤法律事務所からみなさまへ
2026.8.28 
コラム
災害に備える~保険の点検をしてみましょう~

地震や豪雨による被害が各地で相次いでいます。被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げると共に、一日も早い復興・復旧をお祈りいたします。

災害で被災された方からのご相談で少なくないのが、「災害からの復旧に使える保険の有無や内容」があります。保険による備えがあれば復旧の助けになりますが、保険は災害が起きる前にしか点検できません。また、災害はいつどこで起きるかもわかりません。そこで、平時に確認しておくべき点を、ご相談の現場で問題になった順にご説明します。

1 地震による損害は、火災保険では補償されません

意外に思われるかもしれませんが、地震・噴火と、これらによる津波が原因の損害は火災保険の対象外です。地震で発生した火災による焼損も、原則として火災保険からは支払われません。備えるには地震保険への加入が必要です。

地震保険は単独では契約できず、火災保険にセットで加入します。ただし保険金額は火災保険の30%から50%の範囲内で、建物5000万円、家財1000万円が上限です。支払も実際の損害額を補うのではなく、全損(100%)・大半損(60%)・小半損(30%)・一部損(5%)の四段階に区分して行われることが一般的です。つまり、地震保険だけで自宅を建て替えることは制度上できません。住まいを元に戻すためのものではなく、当面の生活を立て直すための資金と理解しておくのが正確です。そのうえで、上限まで付けているかをご確認ください。

2 水災補償に入っていますか?

火災保険の水災補償は、契約時に外すことができます。保険料を抑えるために外したまま忘れているケースが少なくありません。まずは保険証券を取り出し、水災が対象になっているかを確認してください。

水災補償は、河川の氾濫だけでなく、排水が追いつかずに起きる内水氾濫や、大雨による土砂崩れも対象とするのが一般的です。「近くに川がないから不要」という判断は危険です。他方、支払には要件があり、再調達価額の30%以上の損害、または床上浸水もしくは地盤面から45センチを超える浸水、といった条件を定める商品が多く見られます。近年は損害の割合に応じて段階的に支払う型もあります。

3 「建物だけ」になっていませんか?

火災保険は、建物と家財を別々に契約します。建物だけを対象とする契約では、家電や家具、衣類がすべて失われても保険金は支払われません。家財をそろえ直す費用は小さくありませんので、対象になっているか必ず確認してください。

もう一つ重要なのが保険金額です。古い契約には、経過年数に応じて価値が目減りした「時価」を基準とするものがあり、この場合は保険金だけで同等の建物を再建できません。また、建築資材や人件費の高騰により、契約当時の金額では再建費用に届かないことも起きています。数年に一度は見直しをお勧めします。

4 賃貸・分譲マンションにお住まいの場合

賃貸住宅では、建物の保険を掛けるのは大家さんですので、ご自身で備えるべきは家財の保険です。入居時の保険に付いていることが多い借家人賠償責任保険は、借りている部屋を壊したときに大家さんに負う賠償責任に備えるもので、地震や水害でご自身の家財が失われた場合は補償されません。

なお分譲マンションでは、共用部分を管理組合が、専有部分を各区分所有者が契約するのが通例です。管理組合の保険に地震保険が付いていないことも珍しくありませんので、一度ご確認ください。

5 自動車保険 ― 車両保険と、地震のための特約

自動車の損害に備えるのは、自動車保険の車両保険です。対人賠償や対物賠償は他人への賠償のための保険ですから、これらだけでは、水害で壊れた自分の車を直すことはできません。まず、車両保険を付けているかをご確認ください。

車両保険には補償範囲の広い型と限定した型がありますが、台風・洪水・高潮による損害は、限定型でも対象とされているのが一般的です。もっとも、ここでも地震・噴火と、これらによる津波は対象外です。備えるには、地震等による全損時に一定額が支払われる特約を付す必要があります。住まいと同じ構図ですので、火災保険と併せて確認してください。

また、車両保険の支払は時価が基準ですので、年式の古い車では買替費用に届きません。自然災害で車両保険を使うと等級が下がり、その後の保険料も上がりますので、修理費との比較が必要になります。

自動車はエンジン内部に水が入ると壊れますし、車内に水が入ってしまうと洗浄や乾燥のためにかなりの費用や手間がかかりますので、被害を避けることが一番重要です。台風や大雨の予報がある場合、車を高い場所へ移動させてください。また、冠水した道路は思ったより水位が高いこともありますし、他の車が巻き上げた水を吸ってしまうこともありえますので、やむを得ない場合を除き冠水した道路は走行しないようにしましょう。もし被災した場合、エンジンをかけずに保険会社へ連絡してください。再始動によって車両火災が生じることがあります。

6 「スムーズに請求できる状態」をつくっておく

実際に被災した場合に、速やかに保険を請求できる状態を整えておくことも重要です。

第一に、災害で汚損・紛失した場合に備えて、保険証券の写しをクラウドに保存してください。証券番号や内容、問い合わせ先がすぐに分かればスムーズに請求できます。なお、証券を失っても契約は有効で、大きな災害の際には日本損害保険協会の窓口を通じて契約の有無を照会できます。災害時には各保険会社が専用の窓口を設置することも多いため、被災した場合には証券が見つからなくてもまずはご契約の保険会社に問い合わせてください。

第二に、被災前の状態を写真に残してください。各部屋の全景と家財を撮影し、高額なものは領収書や保証書と一緒に保存します。損害の立証は請求する側の課題です。被災後に撮れるのは壊れた後の写真だけですので、平時の記録が決定的な意味を持ちます。また、片付ける前の撮影も忘れないでください。撮影は前掲と被害の部分のアップをそれぞれとるなど、被害の詳細が分かるようにしましょう。罹災証明の取得にも役に立ちます。

第三に、保険金請求権は3年で時効にかかります(保険法95条)。大変な状態が続くとは思いますが、期間内に請求をしてください。

7 支払われないとき、そして「保険で直せます」という勧誘

保険会社の認定に納得できない場合、そこで終わりではありません。争いになりやすいのは、損害が災害によるものか経年劣化によるものかという点で、ここでも被災前の写真が有力な資料になります。解決しなければ、そんぽADRセンター(指定紛争解決機関)への申立てや訴訟という手段もあります。なお、市町村が発行する罹災証明書の被害認定と、保険会社の損害認定は別の制度です。罹災証明書が一部損壊であっても保険金が支払われることはありますので、その結果だけで判断しないでください。

また、災害後に増えるのが「保険金を使えば自己負担なく修理できます」という勧誘です。工事費が保険金の範囲に収まらなかったり、高額な解約手数料を請求されたりするトラブルが報告されています。事実と異なる請求をすれば、契約者自身が詐欺の責任を問われかねません。急がされたときは、その場で署名せず、保険会社や代理店、弁護士などの専門家ご相談ください。

まとめ

災害への保険の備えが十分かどうかは、保険証券を一度取り出して読み返すだけで多くのことが分かります。当事務所では、被災後の復旧に向けてのご相談のほか、事前の備えについてのご相談もお受けしています。

※本コラムは一般的な情報を提供するものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。補償の内容や支払の要件は保険会社および商品によって異なりますので、実際の適用については保険証券および約款をご確認ください。

(半田)