近年私たちの生活にも急速に普及している生成AIですが、私が担当する法律相談や打合せの場面でも「AIで調べました」というご相談者の声を聞くことが出てきました。弁護士に相談するのが初めてだからちゃんと相談できるようにしたい、あるいは限られた時間で効率よく相談をするために生成AIを活用いただくことは有益だと思いますが、特に専門性のある分野ではAIの使い方を誤るととんでもない失敗に繋がることもあります。そこで、まずは注意点からご説明します。
もっともらしい嘘(ハルシネーション)に注意: AIは、存在しない法律や過去の裁判例をさも真実のように作り出すことがあります。専門性のある分野では、専門外の方がAIの回答の真偽を確認することは容易ではありません。AIの回答は鵜呑みにせずにあくまで「参考」に留め、専門家のアドバイスをうけるようにしてください。
情報漏洩を防ぐ: 法律トラブルはプライバシーの塊です。AIを利用する場合でも、自分やトラブル相手の氏名、勤務先などの「個人情報」は絶対に入力せず、ある程度抽象化した質問をするようにしてください。設定でAIの「学習オフ」を有効にしておくのも鉄則です。なお、法律トラブルでは同じ法律が適用される場合でも具体的な事実関係によっては正反対の結論になることもあります。具体的な事情の入力が必要な場合はそもそもAIの利用には向きませんので、AIはあくまでも一般論の確認や考えの整理に使うことにとどめて、具体的な事情に基づく対処法については専門家の相談を受けることをオススメします。
知的財産権への配慮: 証拠となる他人の文章などをAIに入力して処理させる際は、公開しない前提であっても、第三者の権利を侵害しないかの注意が必要です。また、出力された文書や画像、動画が第三者の知的財産権を侵害している可能性もあります。最近ではAIの性能進化が著しく、一見しただけではAIで作成したものかどうかが分からない写真や動画も増えてきましたが、第三者の知的財産権を侵害するものやAIで作成・加工したものは基本的には裁判の証拠として用いることはできません。弁護士が誤って裁判で提出してしまわないよう、AIで作成したものを資料として持参される場合には、必ずAIを利用したことを弁護士に伝えてください。
他方で、AIを正しく活用することで、法律相談や裁判準備の打合せをスムーズに行うことも可能になります。そこで、次にAIを準備でどう使うかの一例をご紹介します。
事実関係の整理: AIは「相談の土台作り(情報の整理)」に使うのが最も効果的です。例えば離婚事件においては「相手方と結婚してから現在に至るまでの経過」が重要になりますが、まず順不同で重要と思える出来事とその日時を箇条書きにしたうえで、AIに「メモの内容を時系列に沿って並べ替えて要約して」とAIに指示すれば、タイムラインに沿った出来事メモが簡単に作れます。
質問事項の整理: ご相談の概要を入力し、「弁護士に確認しておかなければならないことを教えて」と指示し、予め質問事項を作っておくことで限られた相談時間を有効に活用することができます。また、弁護士への説明漏れを防ぐために「絶対に弁護士に伝えておくべき事項を抜き出して」とAIに指示して相談のポイントを整理することも可能です。ただし、AIに入力した前提が誤っていると適切な説明・質問ができませんし、弁護士からも事前準備以外で回答に必要な事情をお尋ねすることは珍しくありませんので、AIの回答にこだわらず、まずは弁護士からの質問や説明を聞いていただくことも重要です。
資料の整理:大量の領収証や日報などのメモを相談時に示されても、弁護士が全てに目を通すことは困難です。このような場合、予めExcelなどを使って一覧性のある形に整理していただくことで効率よく相談をすることができますが、その際にAIを活用することが考えられます。また、長い文章の要約や、録音データの反訳にもAIを活用できます。ただし、弁護士が原本を確認することも必要ですので、まとめたメモ以外に原本も必ず持参ください。
ここまで、法律相談や打合せの場面でご依頼者・ご相談者がAIを活用できる場面を考えてきました。もちろん、上記以外にも活用できる場面は無数にあると思います。まとめると、AIは「情報の整理役」としては優秀なアシスタントですが、あなた個人の事情に合わせた正確な解決策を導き出すのは人間の専門家です。AIを使って頭の中や資料を整理した上で弁護士の相談をご利用いただくことで、法律相談をスムーズに実施でき、弁護士からの助言をより理解することができることにも繋がるとおもいます。また、弁護士側でも法律相談や打合せにAIを活用することで事件処理をより効率的に行うことを検討しています。当面の間はAIを使用する際にはご依頼者に個別にご確認を取らせて頂きますので、その際にはご協力をお願いいたします。
(半田)
