半田法律事務所からみなさまへ
2023.2.14 
コラム
民事訴訟手続のIT化

令和4年5月18日に民事訴訟法等の一部を改正する法律が成立し、本年より順次施行が進むことでいよいよ民事裁判のIT化が本格化します。

これまでは従前の民事訴訟法で定める手続に収まるよう、いわば工夫して行われてきた民事訴訟手続のIT対応ですが、法改正により以下のとおりの規定が設けられています。

①訴状等のオンライン提出・送達(弁護士・司法書士はオンライン提出を義務化)

②期日のWeb会議での実施の拡大

③記録の電子化保存・閲覧

このうち、期日のWeb実施については本年3月1日より弁論準備手続・和解手続が双方当事者ともWebでの参加で実施できるようになります(口頭弁論期日のWeb実施については令和5年度中の施行)。

これまでは、Web会議は改正前の民訴法で唯一双方不出頭で手続ができた「書面による準備手続」を利用(借用)して行われていましたが、この手続では和解ができないという制限がありました。そのため、Web会議で和解をするためには弁論準備手続に切り替えた上で当事者の一方が裁判所に出頭するか、手続を民事調停に付した上で民事調停法17条による「調停に代わる決定」をする、という便宜的な方法が使われていました。

調停に代わる決定でも、異議申立ができる以外は和解と法的に何ら変わりは無いのですが、調書の形式が違うので戸惑われるクライアントも多かったので、今回の改正法の施行では裁判自体の運用が大きく変わるものではありませんが、対外的には少し分かりやすくなったものと思われます。

また、裁判所が開発した民事裁判書類電子提出システム(mints)の運用も開始され、書面の提出の電子化も徐々に進んでいます。

民事裁判手続は大きく様変わりしていますが、形骸化していたとはいえ建前としてあった裁判の公開原則との関係をどう整理するのかや、IT機器の不具合が生じた場合の対策など、まだまだ課題はありそうです。

弁護士の立場としては、裁判所に出頭する回数が減ったことで業務上の負担は減りましたが、外出する機会が減ったことで運動不足が加速しないかが心配です。

また大学で民事訴訟法を教えている立場としては、学生が傍聴できる裁判手続が減ったためレポート課題を出しづらくなった、ということもあります。

便利になる反面、失われていくものもあるのかなあと思うと少し寂しい気がしますね。

(半田)